老朽化対策とZEBを両立する補助事業 上郡町役場本庁舎(後編)

 兵庫県上郡町が2021年1月、本庁舎をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に改修した。環境省「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」の補助金を活用したものだ。前編に続いて、改修計画のポイントを関係者が語る。

 

上郡町役場本庁舎の正面外観(写真:守山 久子)

 

1986年度に完成した上郡町役場本庁舎は、改修工事によって一次エネルギー消費量の削減率50%以上の「ZEB Ready」になりました。改修計画の当初からZEBを視野に入れていたのでしょうか。

 

小田賢氏(上郡町役場財政管理課管財係長):空調と照明の老朽化が進んでいたため、当初はこれらの設備改修に対応した環境省の別の補助事業を検討していました。ただ、外壁タイルの剥離防止対策も急務でした。外壁改修も同時にできるメニューにZEBがあるので、「では挑戦してみよう」となったのです。

 

 改修前、空調には最近、ほぼ毎年不具合が生じていました。空調を単独で改修する場合の見積もりを取ったところ、専門会社の回答は「7000万円ほどかかる。電化すると1億円以上するでしょう」というものでした。ZEBの補助金を利用すれば、同じ1億円をかけたとしても、もっとたくさんのことができます。より合理的という判断もありました。

 

ZEBにするための仕様はどのように設定したのでしょうか。

 

小田:既存の建物の屋上は、太陽光発電などの再生可能エネルギー設備を載せる場所が限られています。ZEB Readyのレベルが現実的だろうと考えました。

 

 もともと、2019年3月に「地球温暖化対策実行計画(事務事業編)」を策定した際に町が所有する複数の施設をピックアップし、省エネ改修を行う前提で省エネ診断をしていました。今回の改修は、このときの想定と、再生可能エネルギーと蓄電池の設置が必要となる補助事業の条件を基に実施しています。これらの前提条件を示したうえで、さらに何ができるかを求めたプロポーザルを行いました。

 

日比谷総合設備(東京・港)と国際航業(東京・新宿)のチームですね。両社が組むのは初めてですか。

 

福田敦信氏(国際航業コトづくり部事業開発グループREデザイン担当部長):照明や空調を更新する環境省の補助事業を中心に、これまでも何度か一緒に組んできました。基本的に、日比谷総合設備が総合的な統括業務および設計業務を含む施工業務、当社はコミッショニング業務や補助金に関する申請業務をそれぞれ主に担当しています。

利用状況に合わせて再検討

 

プロポーザルの選定後はどのように計画を詰めていったのでしょうか。

 

坂尾健一氏(日比谷総合設備LC営業統括本部ソリューションプランニング部主任技師):今回は、外壁と窓ガラスの仕様は前段階の検討で決まっていたため、その後の設計では特に変更していません。主に検討したのは空調の能力です。プロポーザル時の条件をベースに、負荷計算をもう一度やり直して適切な空調機器を選定していきました。

 

飯尾圭造氏(国際航業コトづくり部事業開発グループREデザイン事業推進担当課長):利用状況に合わせて当初の想定より空調能力を下げ、CO2排出量の少ない機器を選定しました。

 

坂尾氏:LED化によって照明の発熱量が以前の半分以下に減ることも、空調負荷の低減に結び付いています。

 

飯尾氏:その他、太陽光発電設備と蓄電池の容量を与条件から変更しました。もともとは10kWの太陽光発電設備と50kWhの蓄電池という想定でした。実際の利用方法を踏まえ、太陽光発電設備を20kWに増やす一方で、蓄電池は30kWhに減らして適正なバランスに見直しています。

 

屋上に設置した太陽光発電設備の一部(写真:守山 久子)

 

 

工事は、室内で業務をしながら進めたそうですね。どのように工夫したのでしょうか。

 

落合茂氏(日比谷総合設備関西支店営業部門第2営業部担当部長):原則、室内での業務を止めないように工程を調整しました。室内の工事はどうしても業務時間以外になりますから、そうした部分の8割ほどについては、例えば金曜の夜18時から養生、材料の搬入をしておいて、土・日曜日に工事を進めました。外部や屋上などの工事は、できる限り平日に実施しました。

 

坂尾氏:当社はデータセンターや電算室のある古い事務所ビルの居ながら工事を多く手掛けています。こうした工事では、少しでも物を落とすと大きな事故につながりかねません。経験を積んできたので、今回も安全に工事を進められたのではないかと感じています。

 

左から日比谷総合設備の落合茂・関西支店営業部門第2営業部担当部長と坂尾健一・LC営業統括本部ソリューションプランニング部主任技師、上郡町役場財政管理課の小田賢・管財係長、国際航業コトづくり部事業開発グループの飯尾圭造・REデザイン事業推進担当課長と福田敦信・REデザイン担当部長(写真:守山 久子)

 

(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)


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