九電の出力制御指令への不履行は695件、「手動制御の不利」拡大へ

九州電力は、2019年度の再生可能エネルギー電源に対して、実施された出力制御(出力抑制)の指令に関する集計値を2020年7月に経済産業省が開催した有識者会議で公表した。

 

 それによると、2019年度にオフライン(手動)制御サイト(発電事業者が手動で出力制御を実施する発電所)のうち、制御指令に不履行だった件数は695件に上った。また、下期から導入した新たな出力制御手法により、オンライン(自動)制御サイト(九電が遠隔で自動的に出力制御を実施する発電所)の制御回数が大幅に減り、オフライン制御サイトに比べて半分近くの制御回数で済んでいることが明らかになった。

 

 九電によると、出力制御指令に対して不履行だった件数は、上期に408件、下期に287件で、通期で695件。九電管内では、2019年9月時点で、旧ルールで接続した太陽光のオフライン制御サイトが2030件も存在しており、出力制御指令に対して不履行が多く出る背景になっている(図)。同社によると、不履行695件の中には複数回、制御指令に従わなかったサイトもあるという。

 

図 九電管内(本土・2019年度下期)でのオンライン制御とオフライン制御のサイト数と制御回数(出所:電力広域的運営推進機関)

 

 九電では、出力制御の不履行が繰り返されるようなサイトでは、公平性の観点から系統連系契約の解除を含めた法的な措置も想定している。同社では、旧ルール時代にオフライン制御で接続したサイトに対しては、オンライン制御への切り替えを呼び掛けている。

 

 オフライン制御サイトが、オンライン制御に移行するには、パワーコンディショナー(PCS)への追加的な投資が必要になる。ただ、九電と経済産業省は、「出力抑制量では、オンライン制御サイトの方が少なく済むことに加え、週末に多い出力制御指令に対応する人件費を考慮すれば、PCSへの追加投資は事業期間中に回収できる」と見ている。

 

 従来から、オンライン制御サイトは、1回の制御による抑制時間がオフライン制御サイトより短い運用だったことから、制御回数が同じでも実際の出力抑制量は少なかった。さらに2019年度下期から、九電が出力制御対象となるサイト選択の考え方を変更したことから、オンライン制御サイトとオフライン制御サイトの抑制量の差はさらに広がった。従来は、オンライン制御サイトとオフライン制御サイトへの制御回数をほぼ同数にするように運用していたが、下期から制御量全体を減らす観点から、両制御タイプを同回数にする運用を止めた。

 

 これにより、当日に制御を回避できるオンライン制御サイトの制御回数が大幅に減った。実績ベースで、2019年上期では両制御タイプとも1サイト当たり8~9回だったが、新たな運用の始まった下期にはオンライン制御サイトは7~8回で済んだ一方、オフライン制御サイトは14~15回と2倍もの差になった。

(日経BP総研クリーンテックラボ)

 

 


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