ZEHの経験を生かしZEB提案 NPOこどもサポート・みんなのおうち(後編)
- 21/07/23
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熊本県大津町の「NPOこどもサポート・みんなのおうち」は、保育園とその運営を手掛けるNPO法人の事務所が入る木造建物だ。県内で初めて、1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の評価を得た。前編に続き、施設づくりの狙いを関係者が語る。
NPOこどもサポート・みんなのおうちの園庭側外観(写真:守山 久子)
どのような経緯で、ZEBとなる木造保育園を建設したのですか。
江口竜一氏(NPOこどもサポート・みんなのおうち理事長):法人の事務所と保育園は以前、他のテナントと同居する賃貸ビルに入っていました。2016年に熊本地震を経験したこともあり、せっかくなら自前の建物を新築しようと考えて現在地に移転しました。賃借した土地に自分たちで建物を建てています。
設計と施工は、高断熱と省エネに配慮した家づくりを手掛けるエコワークス(福岡市)に依頼しました。実は私自身、10年ほど前にエコワークスで自宅を建て、温熱性能に優れた空間の居心地の良さを実感しています。新築計画に当たって鉄骨造のプレハブメーカーからも見積もりを取りましたが、金額はエコワークスの木造案とあまり変わりません。それなら温熱性能に優れた木造で建て、園児たちに良い環境で過ごしてもらいたいと考えたのです。
実際に完成した建物に入ってみると、木の香りが良く空気感もやさしい。子どもたちも生き生きとリラックスしているように見えます。
保育室に続く半屋外のウッドデッキ(写真:エコワークス)
計画の初期段階からZEBを目指したのですか。
岡本博氏(エコワークス執行役員部長):当社は、普段手掛けている住宅の9割をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)としています。今回は非住宅で延べ面積も約280m2といつもより広いのですが、当初からZEHと同様の仕様で計画すればZEBの性能はクリアするだろうと見込んでいました。
設計を進めていく過程では、高断熱化を目指す設計の方向性について建て主の理解を得ていました。ただしZEB化を図るにはさらに太陽光発電設備の費用が加わるので、その同意を得る必要があります。社内では設計と並行して随時ZEBのエネルギー計算をしていましたが、建て主には最後の段階で提案しました。「1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナス」となる最高レベルのZEBはそれまで熊本県内になかったので、熊本県初の案件になることも伝えました。
江口氏:ZEB化に伴って工事費は高くなるけれど、日々の電力費が下がり、地球環境にも良い。そうした説明を受けて、理事会でZEB化を決断しました。夜は電気を使わない建物なので、9年で投資分を回収できるということです。
私たちは大切な子どもたちを預かる立場です。できるだけ健康に良い環境を提供したいですし、地球環境への貢献も踏まえて自分たちの世代でできることをしたいと考えました。
蓄電池は提案せず
太陽光発電はどのように利用していますか。
岡本氏:発電した電気は自家消費し、余剰を売電する計画です。12.6kWの太陽光発電設備は、建物内の電力をまかなうことを前提に必要最小限の容量で設定しました。
江口氏:系統電力はほとんど購入していないので、以前入居していた建物の時と比べて光熱費は段違いに減っています。
蓄電池の導入は検討しなかったのでしょうか。
岡本氏:この建物で蓄電池を使う可能性のある時間帯は少なく、設置に要する価格もまだ高い状況です。現時点であえて蓄電池を導入する必要はないと考えました。将来はむしろ、従業員が使う電気自動車に電力を供給する方法が現実的なのではないかと建て主に話しました。
江口氏:将来の使い方を含めて、私たちと一緒の目線で提案してもらっている点にも信頼感を覚えています。
岡本氏:BEMS(ビル・エネルギー管理システム)は入れていません。入居後1年たった時点で光熱費のデータをもらい、エネルギー報告書を作成したいと考えています。
住宅会社として、これからZEBにどう取り組んでいくのでしょうか。
岡本氏:住宅の建て主には、いつもZEHやLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅を提案しています。同様に非住宅ではZEBを視野に入れることになりますが、木造の新築なら今回のように自社で設計・施工が可能です。鉄骨造などの既存建物の改修では、福岡市の本社をZEB改修した経験を生かしたコンサルティングなども想定しています。
NPOこどもサポート・みんなのおうちの江口竜一理事長(左)とエコワークスの岡本博執行役員部長(写真:守山 久子)
(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)
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