地中熱ヒートポンプで省エネ化 棟晶新社屋(後編)
- 21/02/12
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寒冷な札幌市で既存建物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)改修したのが棟晶の新社屋だ。棟晶が共同開発した小型の地中熱ヒートポンプが、設備面で省エネ化に大きく寄与している。前編に続き、関係者にZEBの取り組みについて聞いた。
棟晶の新社屋。築30年の建物を改修し、1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスになるZEBとした(写真:守山 久子)
棟晶の新社屋(札幌市)は、1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスになるZEBとしています。省エネ化に際しては、地中熱ヒートポンプを採用したことがポイントの1つですね。
齊藤克也氏(棟晶常務取締役) 今回、採用した地中熱ヒートポンプは北海道大学と共同開発したものです。特徴は大きくふたつあります。
ひとつは小型化です。一般的な戸建て住宅では地中熱を採取するためのスペースがカーポート1台分あれば設置でき、ボーリングの深さも6m程度で済む。新築だけでなく改修にも利用可能です。
小型化によって、採熱部分のコストも大幅に引き下げました。今は材工込み120万円程度で販売できるまで価格を落とした状況ですが、最終的には100万円を切るレベルを目指しています。国内で地中熱ヒートポンプを普及させるためには、小型化と低価格化は欠かせません。
もうひとつは、冷房利用も視野に入れていることです。地中熱は全国どの地域でも17度という安定した熱を採取できるため、寒冷地だけでなく、温暖地での冷房利用もできるように考えています。
西方里見氏(西方設計代表取締役) 寒冷地でエネルギー収支を低減させようとすると、地中熱利用は貴重な選択肢となります。いくら太陽光発電設備を設けても、積雪時には発電量が落ちてしまいますから。
ただし、従来の地中熱ヒートポンプはコストが高いのが難点でした。戸建て住宅用で350万円程度かかるので、なかなか使えません。100万円前後になれば使いやすくなりますね。
地中熱ヒートポンプの設置を含めた改修費用には、国の補助金を利用したのですか。
齊藤 国立研究開発法人のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」事業の補助金を得ています。5年間のデータを取ることや汎用性を持つことが採択条件で、補助の比率は断熱化を含む省CO2化に要した費用の2分の1です。
実は私自身、地中熱ヒートポンプの研究者としてNEDO再生可能エネルギー技術開発事業主任研究員を務めています。普及と低価格化の実践を目的に20年度から5年間、小型化した地中熱ヒートポンプを多様な用途で実証していく予定で、北海道大学がデータを収集します。新社屋はその第1弾のひとつです。
中規模ビルをZEB改修
今回は地中熱ヒートポンプを、ダクト式エアコンと放射暖冷房の熱源に利用しています。エネルギー消費量削減効果はどの程度になるのでしょうか。
齊藤 建物全体のエネルギー消費量は、壁掛け式の高性能エアコンを使った場合の4分の1程度に収まる計算です。約23kWの太陽光発電設備を設置したほか、年内には約24kWの蓄電池、12kW相当の電気自動車2台によるV2H(Vehicle to Home)を導入する予定です。これらが稼働すれば、理論上はオフグリッドの建物になります。
西方 戸建て住宅でも、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にするために10kWの太陽光発電パネルを載せることは珍しくありません。中規模ビルとはいえ、ZEBで23kWという搭載量は少ない。それだけ地中熱ヒートポンプによる省エネ効果が高いということでしょう。
齊藤 改修前に比べてCO2の排出量は、省エネによって48%、太陽光発電の創エネによって41%削減できます。合計の削減率は89%で、CO2を17.5t減らすことになります。
建築統計年報によると、延べ床面積1300m2以下の事務所ビルは全国で54万7000棟も存在します。これらの建物全てに同様の断熱化と設備の高効率化を施すと、957万2000tのCO2を削減できる計算になる。民生業務部門のCO2排出量の約4.5%に相当します。全国で同様の改修を手軽に進められるようになれば、多大な効果を見込めるのです。新本社のZEB化が、そうした取り組みに向けたひとつの指針になればと思っています。
新社屋の執務室。既存の全ての窓に、トリプルガラスと樹脂サッシの内窓を設置して断熱性を高めた(写真:棟晶)
基本プランを担当した西方設計の西方里見代表取締役(左)と棟晶の齊藤克也常務取締役(写真:守山 久子)
(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)
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