ZEB、木造、健康を一体に 熊谷組福井本店(後編)

 最近のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、省エネルギーという目的に「木材利用」や「健康促進」を組み合わせた事例が増えている。その一例となった「熊谷組福井本店」は、どのように計画を具体化したのか。前編に続き関係者が語る。

 

熊谷組福井本店の東側外観(写真:熊谷組)

 

2021年7月に完成した熊谷組福井本店は、再生可能エネルギーを含む「1次エネルギー消費量の削減率」が75%以上となるNearly ZEBの建物ですね。

 

新井勘氏(熊谷組建築事業本部建築技術統括部建築環境技術部部長):降雪を含めた降水量が多い日本海側に位置し、敷地面積も565.51m2とけっして広くありません。制約が厳しく1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスになるZEBの実現は難しいので、その次のランクであるNealy ZEBを目指しました。

 

建物の省エネルギー化と同時に、木造や健康オフィスの導入にも取り組んでいます。

 

岩下朗久氏(熊谷組設計本部設計第1部設計第2グループ副部長):4階建てで耐火建築物とする必要があったため、鉄骨造との混構造による木造耐火建築物に挑戦しました。

 

 1階と西側のコア部分を鉄骨造とし、事務室や会議室、展示室などが入る2階以上の東側部分を木造としています。1階を鉄骨造にしたのは、近くに足羽川が流れているため、浸水対策を考慮してのことです。鉄筋コンクリート造と木造の混構造も考えられますが、将来、木造との混構造による中高層建物の事業展開を考えて、汎用性の高い鉄骨造を選択しました。

 

 2階から4階までの木造部分の架構には、当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火ラムダウッド」を採用しました。中央の集成材を覆う燃え止まり層に、石こうボードと断熱耐火パネルを積層させた新方式の部材です。福井本店では1時間耐火の大臣認定を取得した部材を柱と梁に使用しました。梁は、大断面集成材を用いて8mのスパンを飛ばしています。また東側の外周には、耐震壁としてCLT(直交集成板)を配しました。

 

 

福井本店に導入した技術を紹介した1階エントランスホールの展示。左下に木質耐火部材の模型が見える(写真:熊谷組)

 

 

佐部哲治氏(熊谷組福井本店作業所作業所長):木造部分の建て方は住友林業に依頼しました。同社とは2017年に業務・資本提携し、木造建築技術に関する協業を進めています。

 

 このほか内装まわりでも、木を意識した仕様を随所に採用しています。CLTの耐震壁は素材をそのまま見せる塗装仕上げとしたほか、梁は突き板仕上げの不燃シート、柱は県産スギ材の縁甲板などで覆いました。

 

2階の打ち合わせスペースや上階の事務室には、多様な席を設けていますね。

 

西澤雄三氏(熊谷組福井本店支配人):健康なオフィスづくりを意識して、デスクの高さやいすの座り方に変化を付けた什器(じゅうき)を置きました。

 

 3階と4階の執務フロアには、熊谷組と関連会社の社員が約15人ずつ入ります。フリーアドレスの席と固定席を組み合わせ、出張の人が一時的に使えるようにもしています。太陽光発電量や空調システムの稼働状況といったデータを見える化したBEMSの情報を検証しながら、執務者にとって快適で居心地よく、生産効率の高まる運用方法を探っていきたいと思います。

 

3階の事務室。天板の高さを調整できるデスクなど、多様な姿勢で執務や会話ができる什器(じゅうき)を用意した(写真:熊谷組)

 

CASBEEやLEEDの知識が不可欠に

 

建物の環境や健康に関する認証の取得についてはどう考えていますか。

 

新井氏:「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)建築」のSランクと、「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」の5つ星、Nearly ZEBは取得しました。さらに、健康性能を評価する「CASBEEウェルネスオフィス」のSランクについては2021年秋、米国の建築物環境性能評価制度「LEED」のゴールドは2022年1月頃の認証取得を目指して申請を進めています。

 

 CASBEEもそうですが、LEEDを取得したいプロジェクトでは早い段階から要件を踏まえて計画を進めていくことが不可欠です。例えば、福井本店では浸透ますを通じて敷地に降った雨を敷地内で処理するシステムとしていますが、これはLEEDへの対応を考えたものでした。同様に室内の換気量も、建築基準法が定める換気量だけでなく、LEEDで求められるASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)の基準も満たすように設定しています。

 

これからは、省エネ基準への適合にとどまらず、CASBEEやLEEDも一種のブランド価値として必要になっていくのでしょうか。

 

新井氏:外資系企業などからLEEDの取得を求められるケースは既に出ています。設計者、施工者いずれの立場でも、今後はこうした環境認証システムの知識が必須になるのではないでしょうか。

 

熊谷組の担当者。左から福井本店支配人の西澤雄三氏、建築事業本部建築技術統括部建築環境技術部部長の新井勘氏、設計本部設計第1部設計第2グループ副部長の岩下朗久氏、福井本店作業所作業所長の佐部哲治氏(写真:守山 久子)

 

 

(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)

 


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