夏暑くて冬寒いニッポンの家、まず勘違いを解け(1)

世には本質から外れた「なんちゃって省エネ住宅」が少なくありません。住まい手とつくり手の双方が不幸に陥らないよう、正しい知識に基づいた家づくりが求められています。この分野で数多くの実績がある松尾設計室(兵庫県明石市)の松尾和也さんが、「なんちゃって」を脱するためのノウハウを伝えます。

松尾 和也(まつお・かずや)氏
松尾 和也(まつお・かずや)
松尾設計室代表、パッシブハウスジャパン理事。1975年兵庫県生まれ、98年九州大学建築学科卒業(熱環境工学専攻)。日本建築家協会(JIA)登録建築家、一級建築士、APECアーキテクト(写真:日経ホームビルダー)

自然素材住宅はエコハウスにあらず

省エネ住宅、エコハウス、スマートハウスといった言葉は、聞かない日がないほど広まっています。しかしながら、それらの目指す本質を理解し実践しようとしている住宅実務者がどれだけいるのでしょうか。思い返せば、残念ながら非常に少ないと言わざるを得ません。
こういった言葉の本質は、持続可能性(サステナビリティ)に尽きます。CO2問題しかり、エネルギーの大半を輸入に頼っている我が国の現状をみても、持続可能性は非常に重要なテーマです。

しかし、勘違いしている人が少なからずいます。ありがちなのが、自然素材を使えばエコハウスであるという勘違いです。確かに、エコハウスのなかに自然素材を多用した住宅はたくさん存在します。しかしながら、「自然素材住宅だからエコハウス」という論法は必ずしも成り立つとは限りません。自然素材住宅であっても断熱や気密の性能が低く、日射の取得や遮蔽がうまく制御できていないのであれば、冷暖房のエネルギー負荷が大きくなります。それは決してエコハウスではないのです。仮にそういった住宅が年に100万戸ずつ建っていったとすれば、持続可能な社会にはならないでしょう。

CO2排出量は住宅もビルも増加

住宅やビルなどのエネルギー消費に問題があることは、二酸化炭素(CO2)排出量の部門別割合をみれば分かります。例えば2012年度の数値を見ると、は住宅に相当する「家庭部門」が16%、住宅以外つまりビルに相当する「業務その他部門」が21%と、合わせて37%もの割合を占めています。その3年前の2009年度と比較すれば、合わせて4.3ポイント増えています。しかも、3年間で総排出量は11%の増加。「産業部門」や「運輸部門」と比べれば、住宅やビルが足を引っ張っているのかは明らかです。

図 国内の部門別二酸化炭素排出量を2009年と2012年で比較
国内の部門別二酸化炭素排出量を2009年と2012年で比較。住宅に相当する家庭部門は3年間で2.1ポイント、ビルに相当する業務その他部門は同2.2ポイント増加した(資料:全国地球温暖化防止活動推進センターの資料を基に日経ホームビルダーが作成)

一般的な住宅で生じる熱の損失を、部位ごとに相対化した値
一般的な住宅で生じる熱の損失を、部位ごとに相対化した値。特に開口部からの熱の出入りが大きいことが分かる。1999年省エネ基準(次世代省エネ基準)で建てた家がモデル(資料:日本建材・住宅設備産業協会の資料をもとに日経ホームビルダーが作成)

建築物のCO2排出量が増えている理由は、建築実務者がつくっている肝心の「箱」そのものの性能が低いことにあります。すなわち住宅の屋根、外壁、窓といった外皮の断熱性能が低く、日射を冬は取り込んで夏は遮蔽するという省エネの基本ができていないのです。
2020年までに省エネ基準が義務化されることで、業界内ではどう対応していくかが話題となっていますが、そのレベルはたかだか1999年(平成11年)の次世代省エネ基準程度です。現在、新築の戸建て住宅における次世代省エネ比率は、国土交通省の調べによれば60%くらいです。「次世代」というネーミングがゆえに、その基準を「上がり」だと勘違いしてしまった事業者も多く見受けられました。その状況が現在まで15年間も続いてしまっているのは、国家的損失としか言いようがありません。 残念ながら次世代省エネ基準では、夏涼しく冬暖かい生活と省エネを両立させることは困難です。次世代省エネ基準を決めた温熱環境の専門家は、そのことをよく知っています。省エネ基準の義務化が可能にするのは最低限度の生活を守ることであって、決して理想的な水準を担保することまではできないのです。その辺りを勘違いしないようにすることが重要です。

(日経ホームビルダーのウェブ記事を再構成)


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