夏暑くて冬寒いニッポンの家、まず勘違いを解け(3)

「8割近く」が無断熱か

2020年までに省エネ基準が義務化されるとはいえ、2013年の改正省エネ基準は1999年の次世代省エネ基準相当でしかありません。国交省の調べによれば、その次世代省エネ基準ですら日本の既存住宅5760万戸のうち5%程度しかないという実態があります。

私はリフォームも手掛けるので既存住宅の実態はよく実感しているつもりです。その経験から言いますと、1980年基準(昭和55年)は無断熱と同じくらい寒いといって差し支えないでしょう。つまり、日本の戸建て住宅の8割近くは無断熱といっても、あながち大げさではありません。さらに本音を言いますと1992年基準(平成4年)ですら、現実的には寒くてたまらない住宅です。これが日本の戸建て住宅の実態です。

図:日本の住宅の省エネ基準への適合状況
日本の住宅の省エネ基準への適合状況。次世代省エネ基準は5%ほどしかなく、無断熱が4割ほどを占める(資料:国土交通省の2011年の資料を基に日経ホームビルダーが作成)

表:省エネ基準の種類と変遷
省エネ基準の種類と変遷。エネルギーをめぐる社会背景によって、基準が改正されてきた(資料:日経ホームビルダー)

これだけ外皮性能が劣る住宅があふれる現状において、省エネ設備がてんこもりで搭載された家が「スマートハウス」(賢い住宅)ともてはやされる状況は、もはやブラックジョークに思えてきます。私にはスマートハウスは下の写真のようにしか見えません。

真冬に裸でカイロを多用。
真冬に裸でカイロを多用。このようなエネルギー効率の悪い住宅が国内では数多く見受けられる(写真:松尾和也)

真冬に裸でカイロを10個も20個も使っています。厚着すればカイロは1個で済むはずです。  住宅で言えば、断熱はそこそこにとどめて暖房などの設備で快適性をクリアするという考え方です。あたかも我が国の制度では、こんな無駄が許されているのに等しいのです。このように本質から完全に外れた「なんちゃって省エネ住宅」が至る所に存在しています。

本質から外れるということは、省エネ、健康、快適性、経済性など全ての面で費用対効果が非常に低い結果をもたらします。しかも、悪意によるものではなく、知識不足や慣例、思い込み、勘違いなどによることがほとんどです。そういった要因をひとつずつ引き剥がしていければと考えています。

松尾 和也(まつお・かずや)氏
松尾 和也(まつお・かずや)
松尾設計室代表、パッシブハウスジャパン理事。1975年兵庫県生まれ、98年九州大学建築学科卒業(熱環境工学専攻)。日本建築家協会(JIA)登録建築家、一級建築士、APECアーキテクト(写真:日経ホームビルダー)

(日経ホームビルダーのウェブ記事を再構成)


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